メディカルサポネットは、医療機関や保険薬局、介護施設の経営者、事務長、看護部長、管理部門の皆さまに向けた経営・採用支援サイトです。経営・人事・採用に役立つノウハウ情報が満載です。

Powered by

2022.10.21
5

平時から備える職員が離職しないための取り組み
ーー筑波メディカルセンター病院の例を通して

特集ーコロナ離職にどう向き合うか

平時から備える職員が離職しないための取り組み ーー筑波メディカルセンター病院の例を通して

 

 

編集部より

「ナーシングビジネス」2021年6月号「特集ーコロナ離職にどう向き合うか」より抜粋。「平時から備える職員が離職しないための取り組みーー筑波メディカルセンター病院の例を通して」をご紹介します。

高橋 晶(たかはし・しょう)

筑波大学 医学医療系 災害・地域精神医学 准教授/

茨城県立こころの医療センター 地域・災害支援部長・室長

筑波メディカルセンター病院 精神科

 

●インタビュー協力者

筑波メディカルセンター病院 看護部長 田中久美

副看護部長 薗部敬子 平根ひとみ 渡邊葉月

看護師長 菅野江美子 大久保雅美

 

 

   

筆者が10 年来関わっている筑波メディカルセンター病院では、COVID-19 禍において良好なコミュニケーションや管理者対応が実践されています。その事例を踏まえ、コロナ離職を防ぐために必要な病院の取り組みについて考えます。

     

職員が離職しないための取り組み

筑波メディカルセンター病院(以下、当院)はつくば保健医療圏の基幹病院の一つとして位置づけられ、がんや三次救急など地域医療を支える中心的役割を担っています。現在453 床を有し、職員数は約1,400人、その中で看護職は約700 人を占めています(2021 年3 月時点)。今回は看護部長をはじめとした複数の管理者に対し、コロナ禍における取り組みや対応についてインタビューを行いました。その内容と筆者の災害対応経験を踏まえながら、コロナ離職を防ぐために必要な病院の取り組みについて述べていきます。 

 

1.病院の意思を明確に示す

世の中には緊急事態に「強い病院」と「弱い病院」があります。今回のような緊急事態においてはどのような病院組織が強いと言えるのでしょうか。戦争経験国の教訓にはしばしば「スタッフへの情報開示の早さと正確さ」「管理者が現地に足を運んで現状を見ること」の2点が挙げられます。「Show the flag」という言葉がありますが、「旗を見せる・旗を振る」つまり現場に管理者が率先して足を運び、現場の困難な状況を理解して「病院がスタッフを支援する」という意志を明確に示すことが求められます。これにより職員のモチベーションが上がる可能性があります。

 

2.スタッフへの聞き取り調査と対応

スタッフの困っていることを丁寧に聞き取り、迅速に対応することが重要です。たとえば感染症対応者への給料の加算や家族感染を防ぐための宿泊施設の提供、個人用感染防護具(PPE)の十分な確保など、実質的な支援が効果的であることは海外の文献でも明確に示されています1)。

 

よく現状調査において「聞き取りしましたが何もありませんでした」という報告が見られますが、実際にはその担当者に言っても何も変わらないと思っているため言わないという現状や、普段の関係性から管理者に意見を言えないこともよくあります。一般的にコミュニケーションが良好な病院では、看護師、医師、事務職、そのほか多くの職種が入職時から合同で研修を行ったり、若手の頃から「患者をよくするため」「地域に貢献するため」相互に意見を述べることが当たり前の風土がつくり上げられています。当院では、医師や看護師、そのほかの職種が同じ立場に立った意見交換が実践されており、サポートし合える体制および雰囲気づくりが行われています。もちろん、決められた各部署や組織の構造を守ることは大切ですが、気構えずに相談できる関係性が緊急事態前から整っていることで、緊急事態においてもすぐに情報が共有され、管理者は早期対応につなげることができます。結果、スタッフの不安や不満が減少し、離職防止につながると考えられます〔写真-01〕。

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP