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2023.08.25
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医療機関におけるレジオネラ症の集団発生[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

熱や全身倦怠感、肺炎の症状で知られるレジオネラ症。循環式浴槽や加湿器での感染がよく報道されますが、病院で多いのは、冷却塔を利用する冷房設備を通した集団感染です。

今回は医師の石金正裕さん (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)がレジオネラ症の概要と実際に起きた医療機関でのレジオネラ症集団発生について解説します。

●レジオネラ症とは1)

レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)を代表とするレジオネラ属菌による細菌感染症です。主な病型として,重症の肺炎を引き起こす「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」と,一過性で自然に改善する「ポンティアック熱」が知られています。レジオネラ肺炎は,1976年,米国フィラデルフィアにおける在郷軍人集会(Legion)で集団肺炎として発見されたことから,legionnaires’diseaseと命名されました。これに対してポンティアック熱は,1968年に起こった米国ミシガン州ポンティアック(Pontiac)における集団感染事例にちなんで命名されました。

   

レジオネラ肺炎は市中肺炎の2〜9%を占め,日本では感染症法の全数報告対象疾患である四類感染症のため,診断した場合は,最寄りの保健所に直ちに届け出を行う必要があります。

  

主にレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(細かい霧やしぶき)の吸入などによって,細菌に感染して発症します。レジオネラ属菌はヒトからヒトへ感染することはありません。環境におけるリスク因子には,浴場施設,温泉(特に循環式),冷却塔,給湯システム,加湿器,吸引水,井戸水の使用,上水道の破損,気泡風呂,土壌などがあります。宿主におけるリスク因子は,男性,喫煙,飲酒,糖尿病,免疫抑制状態(移植患者,ステロイドの使用),慢性肺疾患,慢性腎不全などが報告されています。

  

レジオネラ肺炎では2〜10日間(平均4〜5日間)の潜伏期間を経て,39℃以上の高熱(比較的徐脈)を認めます。名称に「肺炎」がついていますが,呼吸器症状は軽度のことも多く,中枢神経症状(意識障害,歩行困難)や消化器症状(吐き気,嘔吐,下痢)を認める頻度が高いことも特徴のひとつになります。レジオネラ属菌は細胞内増殖菌のため,βラクタム系やアミノグリコシドは無効で,ニューキノロン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬を2〜3週間使用します。

●宮城県の医療機関におけるレジオネラ症の集団発生2)

宮城県は,6月下旬から7月中旬にかけて,レジオネラ症の発症が確認された患者6人が特定の医療機関を利用していたと発表しました。保健所の施設調査により,空調設備〔冷却塔(2基)の拭取検体〕からレジオネラ属菌が検出されました。6人の患者のうち4人から,冷却塔拭取検体から検出されたものと同種のレジオネラ属菌が検出されました。2023年8月4日時点で患者6人のうち4人は軽快傾向ですが,2人は死亡しています。宮城県は,病院および有床診療所に当該指針に基づく冷却塔の衛生上の措置について注意喚起を行うとともに,措置の実施状況を調査しています。 

●レジオネラ症の感染対策は衛生管理!

医療機関でレジオネラ症が集団発生することは稀ですが,宮城県の事例のように,院内環境の汚染を原因として集団発生が起きることがあります。冷却塔水の衛生管理や,レジオネラ属菌が増殖している可能性がある循環水を使用しないことなどの対策が大切です。

   

【文献】

1)厚生労働省:レジオネラ症. 

   https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html(2023年7月24日アクセス)

2)宮城県:レジオネラ症の集団発生について. 

   https://www.pref.miyagi.jp/documents/47718/legionella20230804.pdf(2023年8月14日アクセス)

  

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。

         

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 出典:Web医事新報

  

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