メディカルサポネット 編集部からのコメント正しくは慢性的な炎症性変化を認める組織学的胃炎である慢性胃炎ですが、日常診察では様々な疾患概念が含まれます。組織学的胃炎の大部分はピロリ菌によるものです。 検査や投薬のための保険病名としてもよく用いられます。 |
▶診断のポイント
保険適用上ピロリ菌の感染診断は,内視鏡検査で胃炎が認められた場合に行うことができ,内視鏡検査前にピロリ菌の感染診断を行うことは認められていない。内視鏡検査により逆流性食道炎,消化性潰瘍,胃癌などの器質的疾患を除外するとともに,胃粘膜を「胃炎の京都分類」等を参考に観察する。胃炎の京都分類は,ピロリ菌未感染の正常粘膜,ピロリ菌感染粘膜,ピロリ菌既感染粘膜を内視鏡的に診断するために内視鏡所見を分類したものである。内視鏡所見でピロリ菌感染を疑う場合に感染診断を行う(具体的な感染診断方法については「ヘリコバクター・ピロリ感染症」の稿を参照)。
ピロリ菌感染以外を原因とする慢性胃炎の頻度は高くないが,ピロリ菌以外のヘリコバクター属(non-Helicobacter pylori Helicobacter:NHPH),サイトメガロウイルスや結核菌などの感染,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬剤によるもの,自己免疫性胃炎(autoimmune gastritis:AIG),クローン病など全身疾患に伴うもの,好酸球性胃炎など特殊な胃炎もある。
ピロリ菌感染と間違いやすいAIGの内視鏡所見は,体部主体の萎縮性変化や固着粘液が特徴的である。組織学的には,enterochromaffin-like cells(ECL細胞)の過形成やendocrine cell micronestを伴う慢性炎症細胞浸潤がみられる。血清学的には,高ガストリン血症と抗壁細胞抗体,抗内因子抗体陽性所見が重要な所見とされている(抗壁細胞抗体,抗内因子抗体測定は保険適用外)。AIGでは胃内は低酸状態であるため,ピロリ菌以外のウレアーゼ活性を持つ細菌が存在する場合があり,ピロリ菌除菌判定時に尿素呼気試験や迅速ウレアーゼ試験が偽陽性となる可能性があるため,注意が必要である。
近年,ピロリ菌以外のヘリコバクター属であるNHPH感染が注目されつつある。慢性胃炎だけではなく,胃MALTリンパ腫との関連も報告されているが,現在保険適用で行える確定診断法はなく,胃生検組織の検鏡でピロリ菌より大型の桿菌を検出した場合にNHPH感染を疑う。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
慢性胃炎の原因を明らかにし,病態に応じた治療を行う。大部分の組織学的胃炎はピロリ菌感染が原因であり,自覚症状の有無にかかわらず除菌療法を行う。除菌に成功すると,びまん性発赤や皺壁腫大,白濁粘液などの内視鏡所見および組織学的胃炎は改善する。胃もたれや胃痛などのディスペプシア症状が消失した場合,ピロリ菌関連ディスペプシアと診断する。胃もたれや胃痛などの自覚症状が,ピロリ菌陰性の場合や除菌後も持続する場合は,機能性ディスペプシアと診断して治療を行う(「機能性ディスペプシア(FD)」の稿を参照)。
▶治療の実際
【ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎と診断した場合】
▶ 一手目 :〈一次除菌〉タケキャブⓇ20mg錠(ボノプラザンフマル酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後),サワシリンⓇ250mg カプセル(アモキシシリン水和物)1回3カプセル1日2回(朝・夕食後),クラリスⓇ200mg錠(クラリスロマイシン)1回1錠1日2回(朝・夕食後)併用
以上の3剤もしくは上記薬剤のパック製剤であるボノサップⓇパック400(ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン)を1週間投与する。
▶ 二手目 :〈二次除菌〉タケキャブⓇ20mg錠(ボノプラザンフマル酸塩)1回1錠1日2回(朝・夕食後),サワシリンⓇ250mg カプセル(アモキシシリン水和物)1回3カプセル1日2回(朝・夕食後),フラジールⓇ250mg内服錠(メトロニダゾール)1回1錠1日2回(朝・夕食後)併用
以上の3剤もしくは上記薬剤のパック製剤であるボノピオンⓇパック(ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール)を1週間投与する。
【ピロリ菌陰性の組織学的胃炎と診断した場合】
NHPHなどのほかの感染症や好酸球性胃炎,AIGなどの特殊な胃炎の可能性があるため,専門施設へ紹介する。
沖本忠義(大分大学医学部消化器内科学講座准教授)
村上和成(大分大学医学部消化器内科学講座教授)
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出典:Web医事新報
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