メディカルサポネット 編集部からのコメント日本国内では、毎年高齢者を中心に肺炎で10万人以上死亡しています。 新潟大 磯野俊仁博士らの研究グループは、細菌性肺炎で感染者の治癒力が低下する分子メカニズムを世界で初めて明らかにしたと発表。低下した治癒力を回復させる方法として、エラスターゼ阻害薬(シベレスタット)の目的外利用が効果的という結果も国際科学誌「Journal of Biological Chemistry」(電子版)で公開しました。 |
新潟大は8日、同大大学院医歯学総合研究科微生物感染症学分野の磯野俊仁博士(日本学術振興会特別研究員)、平山悟助教、寺尾豊教授らの研究グループが、細菌性肺炎で感染者の治癒力が低下する分子メカニズムを世界で初めて明らかにしたと発表した。低下した治癒力を回復させる方法も報告しており、細菌性肺炎の効果的な治療法の開発につながる可能性があるという。【新井哉】
国内では、肺炎や誤嚥性肺炎が難治化し、重症患者や死者が減少しない状況で、毎年、高齢者を中心に肺炎(誤嚥性肺炎を含む)で10万人以上が死亡している。このため、高齢社会が進展する将来に向け、一層効果的な肺炎治療法を確立する必要がある。研究グループは、主な肺炎の原因菌(肺炎球菌)の解析を進めており、今回は、肺炎が難治化するメカニズムの解明に挑んだ。
肺炎球菌に感染すると、免疫細胞が細菌毒素で傷害され、細胞内部からエラスターゼ(免疫細胞の好中球に内包される強力なタンパク質分解酵素)が漏れ出す。研究グループは、この漏出したエラスターゼが肺組織を傷害し、肺炎を重症化させるだけでなく、肺胞上皮細胞のEGF受容体(EGFR)も分解することを明らかにした。
肺のEGFRが分解されると、上皮成長因子(EGF)がEGFRに結合できなくなり、肺組織の修復(肺炎の治癒)が妨げられ、肺炎が難治化する。その改善には、急性肺損傷などの治療薬として承認済みのエラスターゼ阻害薬(シベレスタット)の目的外利用が効果的であることも示された。この研究の成果は、国際科学誌「Journal of Biological Chemistry」(電子版)で公開された。
出典:医療介護CBニュース
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