メディカルサポネット 編集部からのコメント鈴木内科医院院長の鈴木央先生が、在宅医療をする際に必要となるスキルについて解説します。医療者として必要なのは、積極的傾聴のスキル、質問のスキル、共感のスキル、ポジティブ・フィードバック、探索のスキル、非言語コミュニケーション。しかし、それはどのようなもので、どんなことをすればいいのでしょうか?下記の本文記事には具体的な声かけ例も示されています。 |
▶医療者としての対応
【積極的傾聴のスキル】
患者や家族の話を傾聴することは重要である。大切なことは,在宅医療者が相手の話を強い関心を持って聴いているということを相手に伝えることである。相づちを打つ,相手の目を見つめる,相手の話を繰り返す(オウム返し,反復,ミラーリング等と呼ばれる)ことも有効である。患者が「ここが痛かった」と訴えたとしたら,「ここが痛かったのですね」と繰り返す。さらに,後述する「共感」や「ポジティブ・フィードバック」につなげるとさらに効果的となる。
【質問のスキル】
オープン・クエスチョンを使用する(Yes/Noで答えられない質問)。さらに,質問をするときに言葉をできるだけ選ぶことも重要である。「死」→「旅立ち」,「不安なこと」→「気がかりなこと」,「せん妄」→「夢と現実が入り乱れている状態」等,わかりやすく,不安をあおらないものに言い換えることが望ましい。
【共感のスキル】
共感する際には,できるだけ相手の感情に焦点を当てることが重要である。「つらかった」「心細かった」「悲しかった」などの感情を取り上げて,その感情が自然であることを伝える。たとえば「抗癌剤の治療中は体だけではなく,気持ちの上でもつらかったのではないですか」等,体のつらさ以外に感情としてのつらさも共感の対象として取り上げることも効果的である。さらに,「お気持ちわかります。当然の感情ですよね」等,その感情が理解可能であることを伝える。
【ポジティブ・フィードバック】
患者や家族のよい面に焦点を当てて褒めることである。たとえば,痛みがつらかったと訴える患者に対して,「痛みがつらかったのですね(反復)。それはとてもつらかったですね(共感)。よく我慢しましたね(ポジティブ・フィードバック)」等の言葉をかける。
ほかにも生活環境を褒め(「この自宅でリラックスしながら過ごすのは最高の療養環境ですね」),家族を褒め(「すばらしいご家族ですね」),本人を褒める(「こんなにすてきな人だったのですね」)。
【探索のスキル】
相手の感情や価値観を探り,理解しようとすることである。最期のときにはどこで過ごしたいと考えているのか,どんなことを大切にしているのか,してもらいたい医療・してほしくない医療は何なのか。これらのことを,関係性ができていないときにいきなり質問した場合には,患者や家族がダメージを負うこともある。このため,様々な間接的な質問を組み合わせて,その人の価値観を探索する。行ってきた治療に対する思い,自宅や家族に対する思いを傾聴していく中で,その人の価値観が少しずつわかってくることが多い。その上で,「もしかすると,あなたは最期のときには入院せずに自宅で過ごしたいと思っておられるのではないですか?」と相手の価値観を予測するような形で確認を行う。
【非言語的コミュニケーション】
穏やかな笑顔は,重要なコミュニケーション上きわめて重要である。認知症の人は笑顔を識別し,「味方」と認識することができる。患者の顔を正面から見つめ,可能であれば手を優しく触る。拒否がなければさらに手を体幹に近づけていく。重要な話をする際は,背中をさすったり,肩を抱いたりすることも可能である。患者のスピリチュアルな訴えに対して,答える言葉が見つからないときには,手をぎゅっと握って「応援する」ということを伝えることもできる。
これらのスキルを組み合わせて,患者とのコミュニケーションを図る。拒否が出るようであれば撤退し,また別の機会をうかがう。これらを繰り返すことで,患者や家族の価値観を探り,その価値観に矛盾しないようなケアの方針を組み立て,希望される場合は自宅で最期まで過ごしてもらう。
鈴木 央(鈴木内科医院院長)
出典:Web医事新報
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